じゃんけん
目の前に、梨香の小さな手と手紙が三通程ある。

私は"またか…"という態度でそっけなく答えた。

「分かんね。」

「お前相変わらずモテんな。
いい加減、彼氏作ったら?」

私は石ころを蹴飛ばしながら言った。

「だって私に彼氏出来たら優太悲しいでしょ?
だから作んない。」

私は蹴飛ばした石ころを追い抜き、梨香に愛想笑いをした。

「梨香、お前、人の役に立ちたいって思った事あるか?」

梨香は"キョトン"としている。

「どしたの、急に…」

「い、いや。何でもない。」

私は右腕を軽く振りながら急いで言った。

でも、梨香は真剣に考え、答えてくれた。

「うーん…人の役に立ちたいって思った事はないよ、正直。
でも困っている人がいたら助けるよ。
野田さんとか。
優太もそうでしょ?」

「…ああ。」

野田か…

あいつは本当は助けられる立場なのに、人を助けようとしてるんだよな…
< 12 / 21 >

この作品をシェア

pagetop