誉め称えよ


日常は戦争だ。

頭の中でシュミレーションされるイマジネーション。それをリアルにしたいという欲望を理性で抑制しなければならない。



火をつけたい。
火だるまになって狂い叫びのたうちまわる人。

人をぐちゃぐちゃに殴りたい。
顔だけじゃなくて、あばら骨を、関節一つ一つを丁寧に折ってみたり……ああ、眼球を取るのも捨てがたい。
それに、木製バッドはどれほどの殺傷能力があるのだろうか…?


ふつふつと湧きあがる、底があることを知らないサディスティックな欲望。


僕は、僕の世界を救っている。

社会的動物である人間が持つ理性を以てして、欲望を制御させることが、何よりの証。


僕を誉め称えよ。


ぽちゃり、と水滴が浴槽のお湯を波打つ。

…はは、馬鹿だな。どうやらのぼせてきてしまったようだ。
視界がぼやけてきた。
このまま、窒息してしまうのも一興だろうか。






そして、我に返る。


《日常》というぬるま湯のような化け物が僕を見て嘲笑い、言った。


「かわいそうな子」


-end-


Next>>あとがき

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