369日の空。
混乱
【春樹side】戸惑い


「おい、春。お前仕事サボって帰る気か?」
「はぁ?仕事?」
俺はすっかり忘れていた。
だるいな~。いっそのこととぼけておこう。
「お前なぁ、美術倉庫のかたづけがあるだろ?」
「わりぃ先帰るわ。」
そう言うと俺は教室をとびだしたすると、
「「あ。」」
「百合。」
段ボールを抱えた百合がいた。
「お前も美術室か?」
そうたずねると少し困った顔で「うん。」と答えた。
百合がいるなら…
「俺もだから一緒に行こう。」
「お!やっと行く気になったか春。」
そうだ。こいつが居るのを忘れてた。
ぶちぶちうるさい奴は早乙女隼人。
高校入ってから知り合った奴。
とりあえずこいつは邪魔者だ。
追い払おう。
「お前かえっていいぞ。」
「あ!ひょっとして…」
「余計なこと考えてないでさっさと帰れ!」
ほんとうに余計なやつだ。
いちいち探るなっつーの。
「ほら、行くぞ百合。」
「あ。う、うん。」
戸惑った様子の百合の腕をぎゅっとつかみ教室をでる。
気がつけば美術室までずっと百合のうでに力を込めてた。
ぱっと離すと白い腕がほのかに赤くなっている。
「わりぃ。痛かったらいえばいいのに。」
そうするとにんまり笑って
「大丈夫なのにぃ」
と言ってくる。
そんな百合を本気で愛しいと思った。
美術室につくなりよいしょと運んでいた段ボールを机へとおろす。
今は二人っきり。
何をおもったのか俺は気づかないうちに百合を抱きしめていた。
「は、はるちゃん!?」
「な、なんだよ。なんでだきついてんのお前?」
百合は困った顔で、うつむいている。
抱きついたのは紛れもなく自分だった。
百合の手には筆が2本。
「…ごめん。」
謝るしか出来なかった。
「どうしたの?」
まだ百合の背中に回った手は戻ろうとしない。
「わからない。」
そのまま何分が過ぎただろう。
俺はかたまったまま動けない。
「百合?」
どうしよう。俺は何を考えてるんだ?
自分の頭がコントロールできなくなっている。
明らかに混乱している。
「何?」
「あのさ、好きかもしれない。」
俺今なんて?
「いや。好きなんだ。そばに居てくれないか?」
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