ひとひらの
それは、小さなチョコレートだった。

「わ、ありがとうございます。」

喜ぶ私を見て、吉川さんも笑った。

「ん、じゃぁお疲れ様。」

と、手をヒラヒラさせる吉川さんは、
なんだかとても可愛かった。



更衣室には、先に上がっていた
グロスの春菜さんと出くわした。

「なっちゃん、お疲れ様!」

グロスとは、簡単に言えば品出しをしている人のこと。

春菜さんは、私がこのバイトに入って最初に話し掛けてくれた人で
今ではお姉さんみたいな存在の人だ。

「聞いたよ~昨日のこと。」

「?」

「今井くんとご飯に行ったんだって?」

春菜さんは、今井さんと同期で同い年らしく、
とても仲が良いのだと聞いていた。

「あぁ、行きましたよ~。
でも私、途中で寝ちゃって。」

「なんか凄かったみたいだね~

吉川くん。」



「…へ?」

「今井くんに、
『非常識です。』
って、怒ったらしいじゃん。」

「……。」

「いや~見たかったなぁ。」


戸惑う私に構うことなく、
春菜さんは話してくれた。

私が聞いてた話とは違うけど…

でも…それならあの、
今井さんの様子にも理由がつく。

「あの、私トイレ行ってきます!」

私は慌てて更衣室を飛び出した。
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