ひとひらの
結局、何も話せないまま、
今日のバイトも上がってしまった。

溜め息がちにタイムカードを切っていると、

「おつかれさま~」

吉川さんもやってきた。

「あ…おつかれさま、です。」

どうやら吉川さんも
上がりだったらしく
タイムカードを切っていた。

「なんか夏野さん、
元気ないね~」

「へ?」

「何か嫌なことあった?」

「……。」

別に、嫌なんじゃないんだけど…。

「嫌なことじゃなくて、
本当は嬉しいのに
どうしたらいいか、わかんないんです。」

「…ふーん?」

ふーんって…
まぁ、意味がわかんないよね。

「すいません、
意味わかんなくて。」

私は逃げるように更衣室へ向かった。



「いや、わかるよ。」

「へ?」

振り向くと、彼は得意げに笑っていた。

「ツンデレってやつだ。」

………。

「ツンデレ、知らない?」

いや、知ってますけど…
好きな人の前で
ツンツンしてる私は
ツンデレとは少し違う気が……



ま、いっか。

「それでいいですよ。
ツンデレってやつです。」

久しぶりに、吉川さんに笑えた気がする。
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