ひとひらの
「なんか今日、テンション高いッスね。」

そう話し掛けてきたのは、
後ろのレジに立つ今井さん。


いかにも今時な、明るく長めの髪で、
少しチャラチャラしてるにも関わらず
チーフのお気に入りと言うことで
そのことについて何も咎められない人。


「そうですか?」

「だってずっと笑ってるし、
なんか良いことあったんスか?」

「いや~そんなことないですけど。」

きっと頭の中で浮かんだ
あの吉川さんのニッコリ笑顔に
つられただけなんだろうけど

なんて言えばいいかわかんなくて
ついごまかすようにそう答えた。

「あ、そうだ。
今日夏野サン19時までッスよね?」

「あー…はい。」

「オレ、今日18時までなんスけど、
待ってるんでご飯行きましょうよ。」

「いや、待たせるなんて悪いですよ。」

「いやいや1時間だし。
オレ今日車なんで、帰り送りますよ。」

「んー…でも、うち親厳しいんでー…」

「そんな遅くしないんで、大丈夫ですって!」


正直なところ、乗り気になれないだけだった。

だって、今井さん、ちょっと苦手だし…。


それに気づいてるのかどうなのか、
何を言っても引くことをしない今井さん。

お客さんが来てくれれば
会話を遮ることも出来るのに、
日曜の14時は客足も少ない。

諦めた私は、

「わかりました、んじゃ、行きましょう。」

と、今井さんの誘いを受けた。
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