ハネノネ ‐the world that you saved.‐
久々に帰った星は、記憶よりだいぶ殺風景だった。
ハネノネを自分勝手な理由で利用し、罪無き惑星をひとつ滅ぼした人間しか残らないこの星は、なんて哀れなのだろう。
今もなお、生きることにすがりつく姿のなんと痛々しいことか。
「ハネノネが死んだ、だと…?」
寝たきりの偉い人が言った。
僕らは子供なので、彼がどれだけ偉い人かは知らない。
一見みすぼらしい老人だ。
「はい」
「どういうことだ…ハネノネが死ぬはずがない…」
「死にました。あなた方の先祖が滅ぼそうとした星と一緒に。」
衰えた目の前の人間の目から生気が消えていた。
「それでは…ワクチンが…」
「えぇ、作れません。あなたは先祖が行った罪を背負い、間もなく死にます。」
「ワ、ワクチンの情報が入ったと聞いていたが…」
「ハネノネの死によりワクチンの精製は不可能と判断したため、報告に参った次第です。」
人々がどよめきだした。
チキュウで僕にノートを見せた男の驚きの声も聞こえる。
「お、おい!お前さっきノートに…!」
「黙れ」
余計なことは喋るな。
そう念じて制した。