ハネノネ ‐the world that you saved.‐
初めのページには意味不明な数列が並んでおり、さすがにわからなかった。
この国の学問なんだろう。
調べる必要がないと判断し、パラパラとページを進める。
少しすると、丁寧な字で書かれている文章を見つけた。
「…『これは、長い時間を独りで過ごす私の、単なる暇つぶしにすぎない』…?」
「なんだ、それ?もっと情報になりそうなところないのかよ。」
ノートを持ってきた奴が不満そうに唇を尖らせたが、僕は嫌な予感がする反面とても興味を掻き立てられた。
どうやら遺書のようだ。
未練もなにもないような、さっぱりした内容だった。
しばらくページを読み進めると、ある単語が飛び込んできた。
「『ワクチンの、作り方』…?」
「ワクチン?!チキュウ人もワクチンを作ったのか?!」
“ハネの病”とも書いてあった。
恐らくこの国でのハネノネの総称だろう。
「……もしかして、」
この男に供えられていた液体が入った試験管を拾い上げた。
これこそがその、ワクチンなんだろうか。