ハネノネ ‐the world that you saved.‐


供えられたワクチンはふたつ。


ひとつは男の、もうひとつは…?



男を包むように纏った羽根に目をやる。



まるで、天使の羽根。




感じた予感は、


きっとこれだ。





「報告追加。」


「なんだぁ?」




奴は報告用の携帯電話を片手に、まぬけな声を出した。




きっと誰も、夢にも思わなかった。






「ハネノネが死んだ。」






携帯電話が落ちる音がしたと同時に、「はぁっ?!」という声も聞こえてきた。



それはそうだ。


なにせ僕らが聞かされたハネノネの話の中に“死”の言葉が存在しない。

生後間もなく放置されても生きているんだ。
“いずれ死ぬもの”という概念さえ、そもそも無かった。




でも、この羽根はきっとハネノネの亡骸だ。


証拠があったわけではないが、そう確信した。



< 8 / 19 >

この作品をシェア

pagetop