Sweet Vanilla Bean
しばらくすると店員さんが出てきた。
手には薄いクリーム色のシンプルな箱を持っている。
「これなんですが、」
箱からこれまたシンプルでありながらお洒落なデザインの香水を取り出した。
「つけてみますか?」
「はいっ」
「では、手首よろしいですか」
私は素直に手首を出した。
店員さんは左手で私の手首を支え右手で香水を私の手首に吹き掛けた。
《シュッ》
その音と共に甘い香りが広がる。
手首に鼻を近づける。
(ちょっと甘すぎないかな)
甘酸っぱいではなく本当に甘い香りだ。
「バニラの香りです」
「バニラ…」
バニラと聞いてバニラアイスを想像してしまう私が哀しい。
にしても少し甘すぎる。
(ちょっと考えようかな。)
「また、考えてきます」
「はい。またのお越しをお待ちしています」
店員さんは深々とお辞儀した。