“シネバイイノニ”
定期を通してホームに上がると、予想していた通り、既にサラリーマンと学生がワラワラとホームに溢れていて、今日も座って通学する事は絶望的だと電車の到着する内に理解する。
そして電車が到着すると案の定、望人は人の波に飲み込まれもみくちゃにされる。
すし詰め状態の車内で人に押され、不快な表情を浮かべてみるものの、しかし誰かに押された拍子に自分も誰かを押していると考えると望人は押した相手を憎む事はできない。
小さな身体の揺れが次第に大きくなり、そしてその揺れは人を押し、さらにその揺れは勢いを増して人を押す。
車内に立っている人間の身体をみんな何かの器具で固定してくれないだろうか。
そうすれば誰も押す事も押される事も無くなるのに。