“シネバイイノニ”
「名越…?」

植え込みの隅に座る瀬織に望人は近づいて声をかける。

その声に気が付いて瀬織は弾かれた様に後ろを振り返った。

鋭く釣りあがった眉はいつでも怒っているようで、その表情が望人を睨みつけた。

瀬織の座る横で足を揃えて立つ子猫はそれまで貰えていた弁当のおかずのサケの供給がストップした事を疑問に思い、箸を持つ瀬織の右手を軽く小突く。

「なぁ、やっぱさっきのアレはまずかったんじゃないか?」

「……アレって?」

子猫の催促に気が付いた瀬織は望人の視線から目を逸らし、再び子猫におかずを与える。
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