“シネバイイノニ”

望人は瀬織の背中を見つめながら続ける。

「今朝の自己紹介の事だよ。みんななんだか近寄り難い感じになっているし、名越だって編入してすぐにそんな空気でこれから学校生活送っていくの大変だろ?よかったら俺から女子に話しておくからさ、機会があったら輪の中に入れてもらって…」


「私が自分で、そうなるようにしたの」


望人の口が止まった。

瀬織にそう言われて、望人は返す言葉が見つからない。

「……自転車を運転しているとね、いつも私の前に中年のおばさんが居て、自転車をダラダラと漕いでいるの。私よりも断然遅いスピードで」

突然理解できない話に切り替わって望人はしばし混乱する。
< 158 / 177 >

この作品をシェア

pagetop