“シネバイイノニ”
「そうよね。私もそう思う。偶然に決まってる。そして私は…偶然、人に邪魔ばかりされて生きてきた」
偶然……それは“運命”と置き換える事が出来る。
運命を“この世は、人の人生は偶然の積み重ねで成り立っている”と表現したのは神の使いであるフォーチューンだった。
「すべてが偶然。偶然、いつも邪魔をするおばさんが道を塞ぐ。……それじゃあ、おばさんが目の前に存在しない偶然があってもいいもんじゃない?……けど、そんな偶然は存在しない。偶然は常に、全て私を不快にさせる様に仕組まれているの」
ほら、来た。
瀬織はそう呟くと、手元の子猫を去らせて望人のさらに向こうを見渡した。