“シネバイイノニ”
望人がそう呟いたのと、銀行強盗が札束の詰められたバッグを窓口からふんだくって外に飛び出そうとしたのは、ほぼ同時だった。
まだ十分な数の警官が配備されていない中、突然犯人がこちらに向かってくると慌てふためく市民と警官。
危機を察した見物人の悲鳴が上がる。
そんな中で一人銀行の正面に立ち、冷静に構えている望人は周りの光景とは完全に浮いて見える。
望人は銀行から出てくる強盗をじっと正面に見据えている。