“シネバイイノニ”

自分が会社で金を稼いでいる間に妻でさえ自宅で何をしているかわからないというのに、そこにさらにもう一人、それも自分とは血の繋がりの無い人間を介入させるのは気分の良いものではないのだろう。

そして瀬織もそれは仕方の無い事だとして、帰るべき場所の鍵も持たずに外出し、もしインターホンを押しても反応が無いのなら、反応が現れるようになるまで外を彷徨うしかない。

それが例え何時間になろうとも。

今、瀬織の帰る場所はこの叔父と叔母のマンションの薄暗い一室でしかない。

瀬織の祖母は一ヶ月前に他界した。
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