“シネバイイノニ”

薄暗い部屋の中で、瀬織は考える。

どうして祖母が引ったくりに遭わなければいけなかったのだろう。

どうして祖母のバッグは、すぐに肩から外れなかったのだろう。

そもそも、どうして引ったくりは祖母に目を付けたのだろう。

何故、“アスファルトに打ち付けられ、引きずられたにもかかわらず一命を取り留める事が出来た”という運命にジャンプできなかったのだろう。

瀬織は部屋の壁に背をつけて、自分に呆れる様に笑う。

どこにジャンプするかを自分で選ぶ事はできない。

だけど、それが自分の運命。

「……やっぱり私は……嫌われているんだ」

小さく、呟いた。
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