借金取りに捕らわれて
「そんな…責めなくたって…
だって…忘れちゃったものは仕方ないじゃないですか…」



裂かれた服をかき合わせるヒロの手が震えていた。



「 そりゃあ、往復ビンタ "だけ" されたのなら絶対忘れませんでしたよ…

でも、それを忘れてしまうほど…

どうでもいいと思えてしまうほど…

怖い思いをしたんですから…それくらい仕方ないじゃないですか…」




俺は何をやってるんだ…




ヒロが怖い思いをしたのは分かっていた。
ヒロの性格なら、心配させないように無理に笑うのも分かっていたはずだ。

心配して言った言葉だったが、責めるような言い方でヒロを傷付け泣かせてしまった。




「すまない…」




ヒロを傷付けるつもりはなかったんだ。




「ただ…


ヒロの悲しい事悩んでる事傷付いた事なんだって、それがヒロにとって小さな事でも、俺にとっては大事なんだ…

ヒロの事が大切だから…

だから、どんな些細な事でも言ってほしい。

ただ、それだけなんだ…」




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