借金取りに捕らわれて
今しがたペットボトルの水で濡らしたハンカチを、出来るだけ刺激を与えないよう優しくヒロの頬へと押し当てた。


そして、預かっていた眼鏡を掛けてやる。


可愛い顔をもう武なんかに見せてやる必要はない。


そうだ、元はと言えば全て武が引き起こしたことじゃないか。


一発殴ってやらないと気がすまない。







それをヒロは必死で止めに入った。




何故止める…


もしかしたら取り返しのつかないことになっていたかもしれないのに。


しかも…


武寅さん武寅さんと、名前でまた呼ぶ…



「あの…名前で呼んだら…武寅さんのこと、許してくれますか?」




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