借金取りに捕らわれて
「どうでしょう?真希と誠ちゃんには弱いんだから気を付けろって良く言われるんですよね。
だから、聞かれたらいつも嗜む程度ですって言ってます。」



「嗜む程度ね~強いお酒飲んでも全く顔色が変わってないで良く言うよ。」



秋庭さんは慣れた様子でフォークとナイフを使い、野菜とサーモンのテリーヌに口をつけた。その食べる仕草がとても綺麗で、一瞬見惚れてしまっていたのを誤魔化すように私はワインを飲んだ。



「顔に出る時もありますよ?"特定のお酒"を飲むと直ぐ酔っちゃうんです。」




一番好きなお酒なのに、酔いが回るのが早すぎて味わえる時間が短いのが難点なんだよね…




「そのお酒って?」



「教えませんよ。秋庭さんに教えたら悪いことしそうですもん。」



「悪いことって?」



頬杖をついた秋庭さんは意地悪そうな笑みを浮かべた。



「そ、それは…」



「具体的に?」



言い淀む私を追い込むように間を置かず聞いてくる。



こんな公共の場で言葉にしろっていうの?




「俺今まで悪いことしたことあるか?」




業とらしく顎に手を当て考える素振りをするから達が悪い。






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