借金取りに捕らわれて
「婚約破棄の切っ掛けは、彼に縁談が持ち上がったことでした。

営業部の若手エースだった彼に縁談が来ることは希にあったんです。

親しい極一部の人にしか私達が付き合ってることは言ってませんでしたから、それを知らない上司か縁談を持ってきたって責められません。

それで、その縁談相手っていうのが私と同じ部署で働く後輩だったんですけど、取引先のご令嬢で、結婚したら自ずと次期社長の椅子は決まったも同然で、凄く良い話だったんです。

彼は直ぐ私と別れました。

気持ちよりも実利を取ったんです。

でも、私に彼を責められません。

私も同じだから…」




「同じ?」



私は小さく頷いた。




「彼とは同期でした。

話も合うし、一緒にいるのは楽で…

好きでした。友人として。

好きだと言われた時、考えなかったわけじゃないんです。

異性としても好きなのか?

そんなこと考える時点で、答えなんて分かるはずなのに…

一緒にいると楽しいし、きっと異性としても好き"かも"。

それが、私の答えでした。

そんな気持ちで付き合い始めたんです。」




「そんな奴いっぱいいるだろ?」




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