借金取りに捕らわれて
「キスするのに毎回聞かないとだめなのか?」


「そ、そうじゃないですけど…ここ!ここエレベーターですし!監視カメラ、見られちゃいますから!」



扉上の監視カメラを指差して考えを改めてもらおうとしたが、「なら」と秋庭さんは壁に片手を付き私に覆い被さるように監視カメラを背にした。




「これなら、キスしてるところ見られなくて済むだろ?」



確かに、秋庭さんの大きな背中であちらからは私の姿は見えなくなりましたけど…




「そういう問題じゃないです!キスしてるのは分かるじゃないですか!」



そんな私に秋庭さんは溜め息を吐いて、一層眉をしかめる。



「ヒロ…ちょっと黙ってろ。」


「ん!…」


私の顎に手が触れたと思った時には既に遅く、制止する両手も虚しく呆気なく唇を塞がれてしまっていた。



「ふっ…ん…ぅん…」



相変わらず秋庭さんは強引過ぎる!と思うけれど…


ただでさえお酒でふわっとしているのに、貪るようなキスで鈍らされた思考は今までと違う思いを私に作らせた。




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