借金取りに捕らわれて
「ああ、丁度良かった。
玄さん、この子が新しく厨房に入った子だよ。で、こっちが休んでた料理長の玄さん。」


「柏木浩都です。よろしくお願いします。」


「柏木…」



深々と下げた頭に呟かれた私の名前。


そんなに珍しい名字ではないはずだけど…


頭を上げ、再度見た玄さんの顔には驚いていた様子はなくて、あの強面の厳つい表情が張り付いているだけだった。


さっき何かに驚いたように見えたけれど、思い過ごしだったのかもしれない。



「ああ。聞いてるとは思うがワシは厳しいぞ。"どんな奴"でも無能な奴は蹴り飛ばす。覚悟しとけ。」


「は、はい!」




聞いた話だと、バイトの新人で1ヵ月もった人はいないって言ってたよね…

折角良いバイト先見つけたんだから頑張らないと!




密かに胸のなかで拳を握っていると、厳しい言葉を掛けた玄さんにママがフォローを入れてくれた。


「見込みはあるよ。夏樹も気に入ってるしね。」


「あの夏樹が…」



あの夏樹って…




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