借金取りに捕らわれて
まだ私の知らない夏樹さんの顔があるのだろうか?

確かに、出会ってそんなに時間は経っていないから夏樹さんの全てを知っているわけではないけれど、あの優しい夏樹さんからは他の顔は想像もつかない。



間もなくして、ママが呼んでいたタクシーが到着し、二人はそれに乗って帰っていった。



「見るからに怖そうな方ですね。」



遠くなるタクシーを見ながら、次のバイトに少しばかりの不安を抱いていた。


「性格は顔のまんまだな。だけど、ヒロは大丈夫だろう。」


「根拠はなんですか?」



見えなくなったタクシーから秋庭さんの顔に視線を移せば、見上げる顔がニコリと微笑んだ。



「俺が惚れた女だから。」


「つまり根拠はないんですね/////」


微笑まれてそんな台詞を吐かれれば、照れるし胸の辺りがもぞもぞして…

「はいはい、もう中入りましょう。」と、直ぐ顔を背け逃げることにした。



引戸に手を掛けたところで、後ろからスマホが震える音が響いた。


「悪い、先に入っててくれ。」


仕事の電話かな?



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