借金取りに捕らわれて
「芋焼酎…」


秋庭さんはまだ中身の入ったグラスに目を留め、それから何か閃いたような顔をした。


「そうか、特定の酒って芋焼酎のことか。」


私は小さくコクンと頷いた。


「はっ?特定の酒ってなんだ?」


何の話が分からない武寅さんは首を傾げた。


「ヒロは芋焼酎を飲むと直ぐ酔うんだよ。」


「なんだそれ。」


「たまにいるわよね。そういう体質の子。」



そうなんだ~私以外にもこんな体質の人いたんだ~
なんかちょっと会って見たいな~



「あや姉、今日は帰るよ。」


「隼人、ヒロちゃんに変なことしちゃダメだからね。」


「しないよ。」



苦笑いを浮かべた秋庭さんは胸元からスマホを取り出し電話をかけた。相手はマサさんだろう。



「ほら、ヒロ行くぞ。少し外で酔い醒まししよう。」



秋庭さんは私の膝裏と背中に腕を回し、横抱きにして持ち上げた。



いつもなら不平を言うところなのだが…

これは…絶好のポジションでは…

これなら文句は言わないよね?

首に手を回し抱き付くと、秋庭さんが微かに笑った気がした。



「またヒロちゃんと来てね。気を付けて帰るのよ。」



入り口の所でお見送りしてくれた菖浦さんは、お客さんに呼ばれ直ぐ中に戻って行った。



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