借金取りに捕らわれて
溜め息混じりに吐かれた疑問の答えを本人は本当に分からないという感じだったが、確実にー



「間違いなく貴方でしょ。
隼人君、貴方にそっくりよ。」



「いや、それはない。」


真顔で言うものだから、呆れてしまう。


「社長、先方がお着きになりました。」


いつの間にか先程の男性が、獅郎ちゃんの後ろに現れ控えめに声をかけた。


「分かった。今行く。」


ふと下の階を見れば、長谷川がエントランスに歩いて来るのが見えた。


「私も行かないと。」


「ああ、あいつに宜しくな。」


「あっ!そうだ!ニューヨークで晴さんとー」


「絶対言わないって言ってるだろ。」


最後まで言ってもいないのに、不機嫌な声が遮ってくる。

会えばいつも聞くものだから、何を聞かれるのか分かっているのだ。


「もう25年も経ったんだから教えてくれてもいいじゃない!」


「もう25年も経ったんだから諦めろよ。」


私も諦めが悪い方だけど、獅郎ちゃんも私に負けず劣らず諦めが悪い。
さっさと諦めて教えてくれればいいのに!


「俺に聞くより晴に聞けよ。まあ、あいつも教えないだろうがな。」


「そんなこと分かってるわよ、だから聞けないのよ。
晴さんはこうと決めたら絶対曲げないから。」


「普段は温厚なのに、たまに頑固なんだよなーあいつ。」


「それに…晴さんにしつこい女だと思われなくないもの。」


「はいはい。なら諦めるしかないな。」



呆れるように言うと獅郎ちゃんは背を向け、「じゃあな。」と手を上げ去っていった。
私はその後ろ姿に悪態を突きたくなるのを舌を出すだけで我慢した。



「これだから、秘密主義者は。」




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