借金取りに捕らわれて
運命の出会い
今日も伸ばしっぱなしのボサボサの髪を手櫛で一つに纏めて、長い前髪の下にメガネをかけたら準備完了。


鏡に映る私はかなり地味だ。


ある失恋をきっかけに部署替えをしオシャレをすることを止めた。


すると私を良く知る極一部の人以外は私に気付くことはなく、会社を辞めたという噂がたつくらいに凄く地味になった。


服は以前と比べ控えめな色を着るようになった。
今日は灰色スーツ。
靴もヒールの低い控えめなもの。



秘書課時代の私とは全くの別人だ。





「秘書課の柏木さん辞めちゃうなんてな～俺、何気に柏木さんのファンだったんだよな～マジショック。」



それは出勤途中のバスの中だった。


うちの会社のロゴが入った社員証ケースを首にかけた男性2人が吊り革につかまり話をしていた。


「俺も!!柏木さんのファンだった!!噂じゃあ寿退社らしいぜ？」



全く…そんな噂どこから出てくるんだか…



この前聞いた噂では、私の父は大手商社の社長で父の後を継ぐために会社を辞めたのだそうだ。



全くどこからそんな噂が出るんだか…


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