借金取りに捕らわれて
そして帰ろうとドアに向かった秋庭さんが不意に振り返った。


「ヒロ、辛くなったら直ぐ連絡してこい。」



「私、仕事が辛いからって秋庭さんに助けを求めたりなんてしません。」



折角決まった高時給のバイトだし、それに…秋庭さんのおかげて決まったんだから直ぐに音を上げたくない。



「いや、変わりに俺が…」



「しません。」



仕事が辛いからって、体で返済なんてしませんから!!



「もう~、ここは『頑張れよ』って言うところですよ。」



「ハハッ、そうだな。」



そう言って秋庭さんは私の所まで来ると笑って『頑張れよ。』と私の頭をポンポンと撫でた。



私が返事を返す前に彼は「またな」と部屋を出て行ってしまう。



それで良かったんだと思う。



秋庭さんの言葉が嬉しくて、きっと上手く言葉が出てこなかったはずだから。



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