7days




「入学当時から有名でね。美人が入学してきたって。3年がわざわざ1年の教室に見学に来るほどだったんだよ」



下條さんはどこかお母さんを過大評価し過ぎているような気がする。確かにお母さんは綺麗だと思う。けれど、そんなに大袈裟にいうほどでもないと思う。



下條さんが今でもお母さんのことが好きなんだと伝わってくる。




「その“美人”が仇となったんだんだよな…」


「え?」



ぽつり、下條さんが呟く。私に言うためじゃない。自分で思い出したことが無意識に言葉に出てしまったようだった。




「あっ、いや〜可愛い子には変なやつも寄ってくるでしょう?俺がソイツから守るべきだったんだけど、出来なかったんだ。君のお父さんに格好良いところ取られちゃったんだ」



何事もなかったように話すけど下條さんは相当後悔しているようだった。眉尻を下げ何度もため息を吐いている。



お母さんとお父さん、下條さんと“ソイツ”の間に何があったかは分からない。訊きたいけど下條さんにとっては辛い思い出のはずだから。わざわざそれを思い出させるようなことはしちゃいけない。




でも、そこが運命の分岐点だったんだろうと思う。そこで運命が決まったと言ってもおかしくはないはずだ。



「――あの日もそう」



「あの日?」






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