7days





「おー!雨上がった」



「本当ですね」



さっきまでの灰色の空が嘘のような青色に変わっていた。


「ありがとうございました」


くるりと後ろを向いて下條さんに頭を下げる。



「お礼を言わなきゃいけないのは俺の方だよ。話せて良かった」



「はい、私も」



良かった。本当に。話せて良かった。




「お兄ちゃん、見つかるよ。生きてる。大丈夫」



突然、下條さんからお兄ちゃんの話が出てびっくりする。私はお母さんとお父さんのことしか言わなかった。



下條さんは、お兄ちゃんのことを一切口にしなかったから彼はお兄ちゃんが死んだと思っているんだろう。



そう考えていた。だからこそ下條さんが“お兄ちゃんは生きている”と言ってくれると本当にその通りなんじゃないかと思う。



いや、生きている。生きていると私も思っているけど、下條さんの言葉は私の思いを確実にしてくれた。



「俺は君の支えになりたい。また来てよ。色々話聴かせてよ。恋人のことも」



下條さんには分かってしまうのか。思わず苦笑いをする。


「はは、冗談だって。またね」



「また」



下條さんはお店の前に出て私を見送ってくれた。



私はそれを背に帰路に着く。





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