7days
今は、悪魔だ。
「八神さん」
私が出された紅茶に口をつけることはない。
「何で―――お兄ちゃんの名前知っているんですか?」
「……え?」
八神さんは、眉を下げ戸惑ったように笑う。私は、その一瞬を見逃さない。
「"コウタくん見つかると良いね"って言っていたって聴きました。名前を何で知っているんですか?」
“早くコウタくん見つかると良いね”
何気ない言葉。ただの社交辞令のようなものだった。もっと早く気づけば良かった。
「お兄ちゃんの名前マスコミで発表されてませんよ」
八神さんの瞳が揺れた。
「新聞もテレビも“19歳の長男”と報道してますよ」
「…あ…ほら…週刊誌で」
「週刊誌も“19歳の長男”と書いていましたよ。八神さん、おかしくないですか?」
週刊誌は知らない。新聞もテレビも分からない。けど、おかしいと思った。
八神さんがお兄ちゃんの名前を知っているはずがない。私は、八神さんに兄がいるとは言ったけれど“コウタ”と言う名前は教えていない。
新聞もテレビも例え週刊誌でも、“未成年者”の指名手配犯の名前を報道するはずはない。
「噂で……」