【短編】心のドア
「だってあの日!!女の子がカラオケ行きたいて言うとったやん・・・。」


「俺、行くとか言うてへんで?大体、ドタキャンして他の女らとカラオケなんて行くはずないやろ、アホ。」


そういえば・・・雄輔は返事なんてしてへんやったな。

行ってないんやろか??

勘違いやったんやろか・・??

それやったらめっちゃ恥ずかしいやん。


「じゃ・・・ドタキャンして何しとったん??」


恐る恐る聞いてみた。

すると雄輔は微妙な顔つきをした。

やっぱり言えんようなことやん・・・。


「言えんようなことなん??」


雄輔の制服のブレーザーの袖を引っ張って聞いてみた。


「俺な、バイクの免許取り行ってたんよ。でな、キャンセル出たから乗れる言われて麗との約束キャンセルしてしもたんよ。早く取りたかったから・・。1年はな、2人乗りできひんし、早く取って後ろ乗せたい思てたから。あとバイトもしてるしな。ま、そのへんや、全部。」

雄輔はわたしの頭をなでながら言ってくれた。

バイク?バイト??

後ろに乗せたい??

わたしを??

つーか・・・


「じゃあ理由くらい言ってよ!!わたし・・どんだけ悲しい思いしとったか知らんやろ・・。」


「言えばよかったってほんま後悔したわ。でも戻ってきてくれたことやし、これからはそうする。これからはバイトない日は毎日一緒帰って、そして・・その後遊んだりしような。もう疑うなよ。」


その言葉にまた涙が溢れた。

やっと叶うんや。

普通の付き合い。

そしてその相手、雄輔やったんや。


ブレーザーの胸に頭をうずめると雄輔は優しくわたしの背中に手をまわして抱きしめてくれた。
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