【短編】心のドア

~雄輔~

産まれてから感情を表に出したことはほとんどない。

母親が万引きを繰り返して親父が見捨てた時に親父に涙ながらに訴えたのが最初でそれっきりないと思う。

そんな家庭に育ったせいなのか、俺はポーカーフェイスってよく言われる。

冷めてるだけなんやけどな。

笑っちゃいるけど満たされることはない。

今まで出来た女やって俺を満たすことはない。


高校に入学して数日たったそんなある日やった。

万引きをした小学生にコッソリ話しかけ、商品を戻すように話しかけとった女がおった。

俺は母親のせいで万引きには敏感なんや。

あんな小銭くらいの金で捕まるなんてアホらしいし。

横を通ったときその女は


「300円くらいで捕まったらアホらしいで。返してきー。お姉ちゃんがお外でこんなお菓子よりおいしい焼き鳥買ったるから。」


そう言って止めとった。

俺と同じ考えや。

その言った女の顔を見るとすっげー笑顔で、それにいつの間にか見とれとった。

見すぎたのか、女もこっちを見た。

目が一度合ったけどすぐそらされた。

当たり前やけど知らん女。


それからあの女に話しかければよかったわ。って後悔しとった。

でも見つけたんだ。

隣のクラスで。


ツレの大樹にあの女知っとる?って聞いたら知っとった。


「平田麗って子で○×中出身やで。なんやお前気になるんか??」


「いや、別に。この前見かけたからな。」


平田麗・・。

それからというもの、廊下で会ったり帰りに会ったりしたら盗み見するのが癖になっとった。


でも俺にはそのとき1つ上の女がおって、その女と適当にやっとった。

でも1年の秋、冷たい言われて別れた。
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