花ときみ

待ち合わせ時間から3時間も経った。

俺は、誕生日にもらったストラップを見つめた。

蔵重は言っていた。
このストラップは、蔵重が気に入っていた星の写真を切り抜いて作った、と。
蔵重のお手製のストラップだ。

大人しいけど、優しくて、あんな女の子らしい―
初めて―
こんなに―
好きになれたのに、
結局は騙されていたんだ。

こんな雪がふぶいている場所に、
どうして、一人でいるんだろう。

俺は、予定より、早めの新幹線に乗り、帰宅した。
最寄りの駅が近づいても、蔵重から連絡はなかった。

母さんに迎えに来てもらい、帰宅した。
母さんも予定より早い事に、心配をしていた。

俺は自分の部屋に入るなり、荷物を投げ捨てると
ベッドに倒れ込んだ。

もう夜だ―。
電気も付けず、真っ暗の中…車の通る音…次第に雨の音が聞こえて来た。
俺は、そんな静かな部屋で…嗚咽を押し殺すように…泣いていた。

まだ、顔も知らない女の子を好きになってしまった。

初めての恋だった―。

この日から、全く蔵重からはメールも連絡が来なくなった。
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