花ときみ

春宵

俺は、高校3年生となった。
通学路は、桜の花びらが落ちている。

俺は、高校3年生になった。
わくわくして、クラス替え表を見た。
俺と稜人は今年も同じになった。
高校3年間、稜人と同じクラスになったんだな。

そこへ稜人が来た。
「よう、郁弥。お前のおかげで、3年生になれたんだよなぁ。
一生忘れねえよ。」
「まっさか、大袈裟だって。今年も宜しくな?…ってか、お前も理数系のクラス選択したのか!?」
3年に上がる時に、進路によってクラスを選択できるのだ。
「俺は、看護系の就職するから、理数系にした。」
ったく、何も俺に言わなかったじゃねえかよ。
「なあ、知ってるか?今日、転入生来るらしいよ?」
「はぁ!?高3で転入って…、ちょっとキツくねえか?周りは受験で追われて、ピリピリしてるし、そんなで友達出来んのか?」
「まあなぁ。もうすぐ授業始まるし、教室行こうぜ。」

転入生か…。
どうせ、また俺が学級委員長だろうし、世話にしなきゃならねえか。

新しいクラスメートでも、転入生の話題で盛り上がっている。
朝のSHRが始まり、新しい担任も入り、いよいよ転入生の紹介。

教室に入ってきたのは、女子だった。
黒髪のロングで、ストレートで、すらっとした体型。
モデルのように足が長い、顔立ちもいい。

「よーし。じゃ、名前を黒板に書いて、自己紹介して。」
「はい…。」

少しずつ、書かれていく文字。どこかで見覚えのあるような字。
俺は自分の目を疑った。
その転入生は、黒板に名前を書き終えるとこちらを向いた。

「東京から父の仕事上で来ました、蔵重水柚です。よろしくお願いします…。」

――蔵重?

「まあ、受験も控えてるけど、蔵重と仲良くしてやってくれな。席は…知花。手上げろ!」

「は、はい。」
気が付けば、俺の隣の女子の列の席が空いている。
何で、今迄気づかなかったんだろう。
「あいつの隣りだ。よろしくな、…つっても、女子だから女子の方に任せるか。」
蔵重は…ゆっくりと俺の隣の席へ座った。
蔵重は俺の名字を聞いた時は驚いた様子だったが、全くこちらを見ようとしない。

本当に…お前が、蔵重なのか?

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