花ときみ
俺は、屋上を出た。

もう、蔵重のことは考えたくないんだ。

翌日。
その日も、稜人は俺に蔵重と話すように迫った。
そのたびに俺は、話題を変えたり、拒否する。

蔵重は、日にちを重ねることに、だんだんと周りと溶け込んでいく。
その度に、蔵重の笑顔を見ることが多くなる。
同時に、受験生だというのに蔵重に興味を持つ男子も増えていった。
何故か、その男子を見るとイライラしてくる自分がいた。

ついに、休み時間。
予鈴がなり、移動教室に行かないといけない。
1人遅れている蔵重と偶然にも2人きりになった。

そこで、俺は勇気を振り絞ってみた。
「あ、あのッ。蔵重さん・・・。」
すると蔵重は驚いて、
「ご、ごめんなさい。」
とだけ言って教室を出て行った。

やっぱり、向こうも気づいていた。
俺が知花 郁弥だってこと。あのメールの相手だということ。
そこに、忘れ物をしたらしく先に出てったはずの大槻が教室に入ってきた。
「あ、知花。急いだほうがいいよ?」
「お、おう。」
俺が筆記用具などを出していると
「なぁ、知花。水柚を知ってるんだよね?」
「え・・・。」
「本当は、『内緒だよ?』って水柚が言ってたんだけど・・・、本当は水柚、知花と話したいんだよ。」
俺達は、移動教室に向かいながら話すことにした。
「けど・・・さっき、蔵重に話しかけたけど、拒否された。」
「水柚は恥ずかしがりやだから、知花と話すのは怖いらしい。・・・別の意味もあるけど。」
「え?なんつった?」
「なんでもない。とにかく、水柚と話し合って欲しい。それだけ。」
そういうと、小走りに移動教室へ向かって行った。

蔵重は、今までのことをどう思っているんだろうか。

俺は、もう一度蔵重と向き合ってみようと思った。
< 18 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop