花ときみ
俺は、1日の授業が終わると稜人に話しかけた。
「稜人、さっきは悪かった。」
「ん?別にいいよ。で、どうすんの。」
「話し合ってみようと思う。」
「お、そっかそっか。大丈夫だって、きっと向こうもちゃんと思ってることあるんだろうし、聞いてあげろよ?」
稜人・・・。
「サンキュ。じゃぁ、俺、先生に呼ばれてるから、先に帰ってて!」
「おう、じゃぁな。」

俺は、早く用事を済ませたく、急いで担任のいる職員室へ向かった。
「おう、来たか。で、仕事なんだけど・・・。もうすぐ文化祭だろ?だから、副委員長とLHRで文化祭の内容とか決めて欲しいんだよ。」
そうか。もうすぐ文化祭なんだな。
「お前ら、3年だし、最後なんだから、みんなで決めたものにしろよ?じゃあ、これ、資料と、名簿な。じゃ、終わり。帰っていいぞ。」
「はい、ありがとうございました。」

俺はその資料と名簿をもらうと、職員室を出た。
すると廊下で蔵重と擦れ違った。

声をかけたかったが、蔵重も用事があって職員室によるんだろうから、この資料と名簿を教室に置いたら、また戻ってこよう。

その作戦も運よく、ばっちりで、大学の資料が置いてある進路指導室から出てくると大量の資料を抱えている蔵重が廊下を歩いている。

「それ、重いだろ。全部、持とうか?」
と声をかけてみた。
すると、か細い声で
「ありがと・・・。でも、全部はいいよ、せめて半分だけは自分で持つよ。」
そういって、歩くのをとめて俺が資料を半分持った。

教室に戻るまで気まずい雰囲気が流れた。
「あ、あの。蔵重さん、俺のこと、気づいてる?」
「・・・うん。転入してきた日に、名前を聞いて驚いた。でも、洋寧に聞いたら、知花くんだってわかった。」
「一番、聞きたかったことがある。・・・逢おうって約束した日、どうしてこなかったの?」
しばらく沈黙が流れた。

質問したのが悪かったんだろうか、謝ろうとしたとき―。
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