カノジョの秘密。
「だって・・伸吾の大切な先輩なんでしょ?だったらあたしにも、何か出来ることはないかなって思って。」

昔好きだった人が、勇気を出して暴走族から足を洗って、今先輩のために頑張ってる。

それだけでも、素晴らしいことだとおもう。
好きだった人には、幸せでいてほしいよ。


伸吾は迷ったように目を泳がせた。そして意を決したように、こっちを向く。

「・・多分、こんなこと頼むなんて間違ってんだけどさ・・。」

「なに?」

「・・金、貸してくんねえかな?」


・・・え?お金??


「そ、れは・・。」

いくらなんでも・・。
だって、伸吾はあたしからお金を巻き上げて、逃げた。

あの時のこと、悪いって・・思ってるんだよね?


「頼むっ!更紗にしか頼めねえんだよ!まじやべえんだよ先輩!」

あたしが戸惑っていると、いきなり伸吾が土下座してきた。
必死な表情と声に、あたしの気持ちが揺れる。

どうしよう・・・。


「・・いくら、なの?」

一応、そう聞いてみた。

「・・・・・・百万。」

伸吾は顔を上げて、ためらった後、小さくそう呟いた。

「ひゃ、百万!?」

思っていたよりもずっと大きな金額に、あたしは驚いた。

・・百万なんて、絶対に無理だよ・・・。

「ごめん、伸吾・・。あたしには・・。」

「頼むよ更紗っ!この通りだ!」

「やめてよ伸吾っ。」

土下座する伸吾の肩を掴んで、あげようとするけれど、ビクとも動かない。

「お前にしか頼めねえんだよ・・・。」

「・・・ごめんね、伸吾。」

そう、言うしか出来ない。百万なんて、とてもじゃないけど出せない。
軽はずみに、出来ることがあるかどうか、聞いたあたしがいけなかったんだ・・。

「・・・どうしても、無理なのか?」

伸吾の声が、低く響いた。

「・・うん、ごめ」

申し訳なくて、もう一度謝ろうとした、その時だった。


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