カノジョの秘密。
「じゃあ、ありがとうございました。」

そう言って、車から降りようとしたその時。

パシッと腕を掴まれた。

「え・・、」

「待て。田中。」

「はい。」

運転手が返事をする。

「お前、あいつらどかせるか?」

「お安い御用でございます。」

「じゃあどかしてきて。それから、家ん中の荷物全部車に運べ。」

「畏まりました。」

「え、え、え?」

なにが何だかわからない。

「おい更紗。」

「は、はい。」

な、名前で呼ばれた・・。
一瞬、ドキッとしてしまった。

「仕方ねえから、今回はお前を助ける。」

「へ・・。」

「すげえ不本意だけど、俺も目の前で女ぼこられるの見てられるようなカスにはなりたくねえからな。それに、元はと言えば、あいつらに喧嘩売ったのは俺だ。お前がその報いを受ける必要はない。」

「あ、ありが・・。」

「だけど、どちらにしてもあそこにはもう住めねえ。」

「ど、どうしてですか!?」

「お前バカか。面割れてんだろ?あいつらどけても、きっと次がすぐ来る。したら、お前やられんぞ。本当にそれでもいいのか?」

堂島さんの真剣な目に、言葉が返せない。やっぱり怖いんだ。

「だからお前、あの家出ろ。」

「で、でも、あたし引っ越せる費用なんか・・」

「親の金は?残ってねえのか。」

「それはダメ!学費とかで使うものだから・・。」

「・・・なるほど。」

堂島さんはそれを聞くと、まるで探偵のように、手をあご下に置いた。
あたしはそれを見ていた。というか、やっぱり見とれていた。
本当に綺麗なんだもん。


「・・お前さ、」

「へ。」

「さっき言ったよな?」

堂島さんの目が、あたしを捕らえる。

「な、なにを?」


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