大切なモノ
「…お待ちなされ。」




通り過ぎようとして人の横を通ったら、声を掛けられた。




掠れた声とマントから覗くしわくちゃの手を見るからに、老婆だろうか…?





「…何か僕達に御用でしょうか?」





莉緒は私を守るように一歩前へ出る。






「そう警戒なさるでない。私は只の占い師。名もない只の占い師だ。」





【警戒するな】と言われても、如何にも危な気な人には警戒するのが筋ってものだろう。





「お主達をこの地へ導いたのも運命。そしてまた、ここへ導いたのも運命であろう?」




言っている意味が全くわからない。





「どうだい?占って行かないかい?」





どこにでもいる金稼ぎの勧誘のようだ。
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