あの頃から君は
 頭を下げて申し訳なさそうにする総司を、美羽は無言で見つめた。総司はクラスの女子に格好良いと騒がれている。そのせいで、無意識のうちに偏見を抱いていたのかもしれない。女にモテていい気になってる嫌味なやつ、みたいな。実際にそんな素振りを見たことはないけれど。それどころか、同じ年の男子とは思えない話し易さがある。顔が男っぽくないからだろうか。いやいや、それは失礼だろう。

「渋谷、変わってるって言われない?」
「言われない」

 真顔で答える総司に、美羽はくすりと笑う。顔が良くて性格も良いなんて、ずるいやつだと思った。
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