あの頃から君は
 小巻は溜息を漏らして手の中の携帯をじっと見つめた。メールくらいしてみようか。この際、無視されても構わない。目の前で曖昧に拒絶されるより、ずっと増しな気がした。
 小巻は意を決してメール画面を開く。

(今、学校に居ます。今から帰ります、と。よし、送信)

 階段に差しかかると下から足音が聞こえ、小巻の心臓がどきりとはねる。慌てて携帯をポケットにしまった。駆け上って来たのは、小学六年生の時に同じクラスだった高津だ。小巻に気付いた高津が驚いた表情を浮かべる。
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