旦那様は社長 ♥特別編♥
「おい」
「メスを見つけたら追いかけて。穴見つけたら突っ込んで。そんなの、犬と同じよ!!」
「お、おい……」
オレ以上に朝からとんでもない発言をしている光姫。
誰も聞いていないと分かっていても、ついキョロキョロと見渡してしまった。
まずい。
完全に光姫が切れてしまった。
「悠河ってセックスのことしか考えてないんじゃないの!?」
「いや、考えてるのはお前のこと……」
「いつもひとりよがりなのよ、悠河は!自分がしたい時だけあたしに触って。あたしの気持ちなんてまったく考えてくれない!」
「す、すまん……」
「夫婦だからってね、あたしは悠河の所有物じゃないの!抱きたいときに抱ける都合のいい女じゃないの!分かる!?」
「わ、分かった」
分かったから、早くその包丁をしまってくれ……
とは言えなかった。
「やってらんないわよ、もう!」
包丁をまな板に叩きつけるように置いた光姫は、エプロンを脱いでオレに投げつけると、寝室に戻って行った。
そうとうお冠な様子だということが、光姫が扉を閉める音で分かった。
家が……揺れた……。
ここまで光姫が怒ったのは初めてのことで。
まさかこれをきっかけに“離婚”なんて光姫が言い出さないか、不安で足が震えた。