あめあがり
「…佐伯って相変わらずだなぁ」

「え?」

「…俺さ、亜美を君が預かってるのは、

ただの隣人だからじゃなくて、お前が亜美の親戚か何かか、もしくは…」

「ん?」

「亜美の父親の交際相手かなと、思った。斉藤さんって父子家庭だろ。」

「違うわよ」

「…だろうね。斎藤さんが君に凄く遠慮してて

他人行儀だから違うってわかったけど。

他人でも人が困ってたらほっとけなくなる…

昔と変わってないな…佐伯らしいってか…」

「…お節介って言いたいの?」

「いや、きっと斎藤さんは、凄く助かってるし、

亜美も安心してる。だけど、もし、斎藤さんの病気が長引いたら?」

「…考えて無かった。」

「一応、俺、亜美の担任だし、改めて出直して、

斎藤さんと今後の事を相談するよ。亜美、明るくしてるけど、

授業は上の空、宿題もしてなくて、忘れ物もあって…

心配するから、斎藤さんには、言わなかったけど、かなり不安定だ。斉藤さん、

倒れる前から体調崩していたんだろうね。

亜美は一人でずっと心配していたんだと思うよ。」

「…私」

「あ、責めてるんじゃないよ。佐伯が悪いんじゃないさ。

誰にも親の代わりは出来ないんだから仕方ない。たぶん、施設だったらもっと

不安定になってたと思うよ。俺、しばらく亜美の宿題と翌日の準備まで

見に来ようと思うんだ。本当は、それも過剰介入になるんだろうけど。」

「私のせい?」

「いや、俺の意志だから。」

「…野澤くん変わったね。ちゃんと先生してるんだね。」

「…あ、昔の話しはまた今度。そろそろ帰らないと。面会時間過ぎてるよ。」





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