あめあがり
「佐伯が、嫌がってる見たいに見えたからつい、追い出したけど、

これでよかったんだよな?」

「うん…私…ゴメンね嫌な役させちゃって・・・元かれなの。

別れたのにしつこくて・・・ここのところずっと困ってたの・・・

助かったは。ほんと・・・ありがとう」

 野澤は表情を変えず

「佐伯がそれでよかったんなら。いいよ。

あ、亜美は、今部屋で宿題してる。しばらく俺が見てるから、落ち着いたら来いよ。」

「…大丈夫よ。亜美ちゃん、きっとお腹空かせて待ってるわ。シチュー作ったの。野澤くんも食べてってよ。」

加奈子は、わざと明るく言った。

「…ああ。ごちそうになるよ。」

三人で食事をした。亜美は、無邪気な笑顔で大好きなシチューに大喜びだった。

「やった〜亜美クリームシチュー大好き」

「たくさん作ったわよ」

亜美の無邪気な笑顔と明るさが気まずい空気を変えてくれた。

「お!うまそうじゃん。いただきます。」

何事も無かったように三人で食事をする。

野澤は、さっきの顔と違う顔で穏やかにそこにいて、亜美は無邪気に笑っている

3人とも他人なのに、まるで家族みたいに食事していた。

だけど、やっぱり亜美に接している野澤は教師の顔で、亜美にとって私はお隣のお姉さん

で・・・野澤にとって私は中学の同級生・・・

「お姉ちゃんのシチュー美味しいね。」

「うん、佐伯、料理上手いじゃん。」

「料理教室に二年位通ってたの。あ、野澤くんも知ってるでしょ、同じクラスだった叶麻由

子さん。」

「…誰だっけ?覚えて無いな。」

「…私といつも一緒だったメガネかけた…」

「…あぁ、思い出した!やたらデカイキリンって呼ばれてた女子、いたなぁ」

「そう、そう。その麻由子が結婚前に花嫁修行で通い出したから、私も一緒に通ってたの。

結局嫁に行く予定がたたなくって二年も通ってたの」

加奈子は、口を尖らせて拗ねた顔をしてみせた。

 「ぷ、」

「何よ、笑いすぎ。」

「自虐ネタだと思ったんだよ」

「お姉ちゃん、先生のお嫁さんになってあげたら?亜美は、パパのお嫁さんになるから先生

は、譲ってあげるね。」

「まいったなぁ…俺って亜美にフラれたんだ?」

「だって、しょうがないでしょ。亜美はパパが一番好きなんだもん。だから、お姉ちゃんから

シチューの作りかたを習ってパパに作ってあげるの。」

「亜美が作った料理なら、きっとパパ喜ぶな。」

「じゃあ、今度教えるわね。クリームシチューでいいの?」

加奈子は亜美と野澤の明るさに救われていた。

っていうか・・・心の底から・・・楽しい・・・


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