あめあがり
希と別れて一人になったら

もっと傷付き淋しい思いをすると思ってた。

だけど、何も変わらなかった。1人に戻っただけで、寂しい事も有ったけど、

思ったより辛くなかった。

付きまとわれていい思い出が

嫌な思い出に塗り替えられていく方がよっぽど辛かった。

こんな時に人の世話なんて可笑しいかも知れないけど、こんな時だからこそ

人と関わっていると落ち着くのかもしれない。

一見人助けに見えるけどほんとは、そうじゃない。

独りだったら、こんな笑顔は無かったはず。

亜美と関わっての生活は、穏やかで癒されている。

加奈子はそう感じずには居られ無かった。

子供の頃の自分に会っているみたいだと思う。

同時に、加奈子は、自分を捨てた母親の事を考えていた。

ずっと恨んで来た母親。ずっと忘れ様としてきた。

亜美の笑顔や親を思う姿を見ていると愛おしくなる。

加奈子がこれまで、人に世話をやいたりして来たのは、

その人に嫌われるのをいつも恐れていた事と、

自分の居場所を作る為の癖みたいなのが強かった。

亜美への気持ちは、見返りなど無い 母性から来る物だった。

本当の親なら子供がこの何倍も愛おしいはずだ。

亜美の母親はこんなにかわいい子をなぜ捨てたのだろうか?

母は、どんな思いで私を捨てたのだろうか…



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