縦笛@ne.jp

そんなある日のコト。


今日もいつものように石田が家に来た。


少しいつもと様子が違ってたんだ。


石田の大きな声がベランダのほうから聞こえてくる。


『田中!!田中ーっ!!!!!』


大声で叫んでる。


なかなか帰る気配もない。


しびれを切らしたあたしはベランダに出て下を見たんだ。


そこには笑顔の石田が立っていたんだ。


太陽みたいな笑顔で笑う石田がいたんだ。


『おーい!!いつまでもお前はそれを引きずって生きていくのか?』


「………。」


やめてよ。


やめて…。


恥ずかしいよ。


『たった1人…たった1人信用できなくなったからって今後の人生決めたりすんなよ!!俺が忘れさせるから!俺が忘れさせるから!!』


ねぇ、やめてってば。


近所に聞こえるでしょ。


『なぁ、なんとか言えよ!いつまでも逃げてたって何も始まらないぞ!なぁ、俺に全部預けろよ!その悲しみも苦しみも全部俺に預けろよ!!』


気付くとあたしは外に出ていた。

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