。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
あれ?新しいケータイどこへ置いたっけ?
確かその辺に置いたはず……
あたしはソファや、ローテーブルの辺りを見回したが、ピンクのケータイはどこにもない。
てか、叔父貴にもらった大事なケータイを雑に扱うなよ、って話だよな。
「あれれ?」
65型のでっかいプラズマテレビの隣にどっしりとした木のサイドボードがある。
そこに入ってるとは思えなかったけど、あたしは何となく観音開きの扉を開けた。
中には引き出しがいくつもついてる。
その一つの引き出しから白い紙のようなものがちょっとはみ出ていた。
「はみ出てる。几帳面な叔父貴にしちゃ珍しいな~」
直しておいてやるか。
そんな軽い気持ちだった。
引き出しを開けると、紙のようなものは薬の袋だった。
表書きに“御園(ミソノ)医院”と青い字で書いてある。
御園っちゃ、青龍会お抱えの専属医院だ。
医者もそこで働く看護士たちもみんな青龍会のもんで、組のもんも良く世話んなってる。
極道にいると世間に明らかにできない傷をこさえてくることなんてしょっちゅうだし、重要人物の大病など知られちゃならねぇ情報も御園はまるでスイスの銀行並に隠しおおせる。
もちろん腕も確かだが、口も硬い、闇医者っちゃ闇医者だな。
そんな病院の薬が何でここに?
少し痩せたことと何か関係してるのかな?
まぁ会社の方の経営もあるし、今は玄武、朱雀の勢力拡大、それに伴い白虎との盃の件もあるし、きっと疲れてるんだろうな。
あたしは深く考えずに、引き出しに袋をしまった。