。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。

龍崎家の立派な、というか古くさい日本家屋に帰って玄関を開けると、


「ただいま~」


とあたしは控えめに挨拶をした。


こんな時間みんな寝てるか、博打打ってるかだ。


あがりがまちに鞄を置いて、あたしは一瞬止まってぎょっとした。


龍の絵が描かれたいかめしい屏風の隙間からメガネの姿が見えたから。





メガネは……柱にもたれ掛かって座り込んでいて、膝を立てて目を閉じてた。


寝るところなのか、薄手のパジャマ姿だった。


え……寝てる?こんなところで?


あたしは靴を脱ぐと、そっとメガネに歩み寄った。


あたしの気配に気づいたのだろうか、メガネはゆっくりと目を開けると、あたしを見上げた。






「あ。朔羅さん。おかえり~」





にっこり笑顔を浮かべてふわふわ言う。


ホント……ぬいぐるみみてぇ。



「てかお前何でこんなところで寝てんの?」


「え?朔羅さんを待ってたんだよ」





え―――?あたしを……?






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