。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
「あれ?」
あいつ…どこ行ったんだ?
あたしがキョロキョロと辺りを見渡す。
「お嬢!もしかして“あの野郎”が出たんですかい?」
マサが今にも飛び掛ってきそうな勢いで聞いてきた。
「あの野郎?」メガネのことか?
「ほら、黒くて光ってる、Gの野郎ですよ」
タクが答える。
黒くて光ってる……G…
う゛
あたしは思わず口を覆った。
その名を口に出すのもおぞましいGOKIBURIの野郎のことを言ってると気づいた。
そう、あたしがこの世で最も苦手とする“あいつ”それはゴキブリだ。
あの野郎を見た日にゃ、一日寝込むぐらいの勢いだからな。
「何だ、違うんですかい」
一同がほっと安堵のため息を漏らし、急に真顔になると全員顔を赤らめた。
?
首を傾げて自分を見ると、あたしはバスタオル一枚を巻いただけの格好だったことに気づく。
「わ゛~~~!!」
あたしは叫んで、慌てて引き戸をピシャリと閉めた。
「「「す、すいやせんでした!!」」」
野郎共の声が聞こえてまたバタバタと遠ざかっていく。
あたしは鏡に向かうと、赤くなった頬を両手で包んだ。
てか、メガネはどこへ行った―――?
あたしはホントにメガネを見たんだろうか?